見出し画像

一日で千日のご利益をいただける成相寺の「千日まいり」

日本に古くから伝わる山岳宗教の修験場であり、全国に5つしかない「聖(ひじり)の住む所」として信仰を集めている成相寺には、毎年「千日さん」と呼ばれる日があるのをご存知でしょうか? この日は観音様の特別なご利益をいただける、ありがたい日として親しまれてきました。

成相寺の「千日まいり」とは?

画像2

「千日まいり」とは、一日の参詣で千日分のご利益があるとされる特別な日です。成相寺では8月9日を“千日さん”と呼び、御本尊である聖観世音菩薩(身代わり観音)のご利益をいただける功徳日(くどくにち:現世・来世に幸福をもたらすことになる善行が平日の参詣以上にあるとされる日)として、古来より続いてきました。
当日は大施餓鬼供養(だいせがきくよう)に始まり、古くより伝わる柴燈護摩祈祷(さいとうごまきとう)、大火生三昧(だいかしょうざんまい:火渡り修行)、千日法会が行われます。

飢え・渇きから救う「大施餓鬼供養」

画像3

「大施餓鬼供養」とはどのような供養なのでしょうか?
仏教では、人が亡くなると生前の功徳において、六道(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)に振り分けられると考えられています。その六道の一つである餓鬼道は、常に飢えと渇きに苦しむ亡者の世界。ここに落ちた魂や、無縁仏のような供養されない死者に、食べ物や飲み物などの供物を施し、供養することを施餓鬼供養といいます。

画像4

施餓鬼供養はお盆に行われることが多く、亡くなった先祖や家族の供養と同時に餓鬼の供養を行い、徳を積むことで自分にも救いがあるとされていることから、成相寺では観音信仰における功徳日である、千日まいりの日に合わせて、大施餓鬼供養が執り行われているそうです。

復活した修験の場!! 「柴燈護摩祈祷」と「大火生三昧(火渡り修行)」

画像5

「柴燈護摩祈祷」とは、心願成就を祈祷する密教の儀式です。野外で行う大規模な護摩祈祷で、四方をしめ縄で結んだ結界の中に、薪を井桁(いげた)に組んで檜や柴の葉で覆った護摩壇に不動明王や愛染明王などの仏菩薩をお招きし、お焚き上げを行います。霊験あらたかな霊山としても全国に知られる成相寺では古来より行われていましたが、一度途絶え、平成の初め頃に復活しました。

画像6

修方(作法)は流派にもよるそうですが、主には結界内に導師と山伏姿の行者が入場し、法弓の儀により結界内に魔を入り込ませないよう東西南北・護摩壇・鬼門に破魔矢が放たれます。破魔矢には身にかかる不幸や災といった「魔を破る力」があるとされ、さらに開運などのご利益もあるので、放たれた破魔矢を受け取った人は持ち帰ってお祀りしてくださいね。

画像7

その後、法剣の儀で檀木を清め、結界内の穢れが払われます。導師による願文(がんもん)の後、護摩壇に点火され、柴燈護摩の御本尊としてお祀りしている不動明王を護摩の火焔の中にお招きし、読経の中、願いが書かれた護摩木の御焚き上げが行われます。

画像9

護摩壇で勢いよく燃える炎は、不動明王の智慧(ちえ)を表しているといわれ、そこに焼べる護摩木は人間の煩悩を表しているといわれています。護摩木に書いた無病息災や、その他の様々な願い事を、智慧の炎で焚き上げ、私たちの煩悩を焼き払い、清らかな心で心願成就が祈祷されます。また、護摩の煙は厄払いにもなるといわれ、当たると有難いものといわれています。

画像8

柴燈護摩祈祷が終了したら、護摩壇を均して大火生三昧(火渡り修行)が行われます。

画像10

まずは行者が大釜で沸かした熱湯で心身を清める「湯加持(ゆかじ)」を行い、火渡り修行にあたり再度魔を祓う「清浄払い」が行われ、熾火(おきび:薪が燃え尽き芯の部分が赤く熱した炭火の状態)の上を裸足で渡り、火渡り修行が始まります。

画像11

次に一般参拝者も順番に祭壇で祈りを捧げ、火渡り修行に参加することができます。
火渡り修行では、護摩の浄火を渡ることで罪を焼き祓い、功徳を授かるといわれているので、千日まいりに訪れた方はぜひ参加してみてください。とはいえ、最初の一歩を踏み出すには勇気がいりそうですね。

画像12

柴燈護摩祈祷と大火生三昧(火渡り修行)が終わったあとは、「千日法会」が行われ、本堂内陣で数名の僧侶により1時間ほど読経が行われます。

年に一度の「千日まいり」に願いをもって

画像13

昔は地元の人たちがご近所さん同士で誘い合い、参詣に訪れていたそうです。無病息災や商売繁盛など人の願いは様々ですが、この日は観音様のご利益が大きい日。何を願いたいのか整理することで、自分を見つめ直すきっかけになるかもしれませんね。

御朱印_ヨコ

千日まいりの日にだけいただける御朱印もあるので、8月9日は御朱印帳を持って成相寺の観音様に会いにいきませんか?
※左上の草創1300年の記念印は令和5年3月末までの限定印です。

<千日まいり 例年の順序>
11:00頃〜 本堂にて大施餓鬼法会 
12:00頃〜 五重塔下広場にて柴燈護摩 
16:00頃〜 本堂にて千日法会 
17:00頃〜 五重塔下広場にて柴燈護摩 
17:30頃〜 火渡り 

※2021年度は諸事情を鑑み大火生三昧(火渡り修行)は行われません。
※詳しくは
ホームページをご確認ください

<データ>
橋立真言宗 成相山成相寺
宮津市成相寺339
TEL:0772-27-0018
拝観時間:8:00~16:30
拝観料:大人500円・中高校生200円・小学生以下無料 ※団体30名以上400円(大人)
ホームページ