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【天橋立#14】知って・体験して・その先の未来へ!天橋立総まとめ

日本三景のひとつ「天橋立」。奇跡の絶景として古代より人々の心を魅了し続けてきた“謎多き天橋立”の魅力を連載記事で紐解きます。
今回は、今までにご紹介した天橋立の魅力を総まとめ! 天橋立の歴史や観光スポット、世界遺産登録に向けた取り組みなど、ぎゅっと詰め込んでお送りします。

宮津のまちと天橋立

宮津市が誇る観光地・天橋立。きれいな海と松、白い砂が造り出す絶景は誰もが一度は行ってみたい地でもあります。とはいえ、天橋立の成り立ちや歴史、穴場ビュースポットなど、実は知らないことばかり。まずは基礎知識や歴史、植物などから紐解いていきましょう。

まずは天橋立の成り立ちなど基礎知識から

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天橋立の名前は誰しもが聞いたことがある、人気の観光地です。年間約300万人が国内外から訪れるほか、足利義満や雪舟、与謝野晶子といった歴史上の有名人も多く訪れています。6,700本に及ぶ青い松並木と白い砂「白砂青松はくしゃせいしょう」が約3.6㎞続く景色は多くの人を魅了しています。

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そんな天橋立ができたのは、今から約2200年前!宮津湾の海流と阿蘇海の海流がぶつかり、徐々に砂が堆積したことによって今の形になっているのです。やがて周辺に人が定住するようになり、海に面していることもあって、たくさんの船が往来し、丹後王国(古墳時代に栄えた勢力)を代表する国際貿易港のひとつとなり、豊かな都市へと発展していきました。

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現在では観光客の体験のひとつ「股のぞき」も天橋立の代名詞のひとつです。
股のぞきは、天橋立に背を向けて立ち、前かがみになって股の間から景色をながめること。この見方をすると、普通に立って見るときと空と海の景色が逆になり、天橋立が空に向かって伸びているように見えるのです。この股のぞきをするならば、ぜひ「傘松公園」で。股のぞき発祥の地としても有名で、今では写真のような股のぞき台も設置されています。

天橋立入門編!知っているようで知らない天橋立の基礎知識はこちら▼

多くの文化人を魅了した天橋立

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日本三景のひとつに数えられる天橋立は、長い歴史の中で多くの人が注目してきた地でもあります。古いものでは、奈良時代の和銅6年(713)に編纂された「丹後国風土記」には、国作りの神として知られるイザナギノミコトが天と地を行き来するために架けた梯子が、眠っている間に海の上に倒れてしまい天橋立ができた、という記載がされています。

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提供:京都府立丹後郷土資料館

ほかにも、『百人一首』には、和泉式部の母・小式部内侍の和歌「大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立」が載っていて、貴族の間では天橋立は憧れの地として認知されていたと考えられています。
また、天橋立を描いた超大作、国宝・雪舟『天橋立図』(1500年頃作・写真)は、天橋立と府中の街並みや、成相寺、籠神社、智恩寺などが緻密に描かれています。

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江戸時代には書物が庶民にも浸透し、より多くの人が天橋立の存在を知るようになりました。元禄2年(1689)儒学者の貝原益軒の紀行文『己巳紀行』では、「天橋立が日本三景のひとつと言われるのもその通りだ」と記していることからすでに日本三景のひとつとして世間に定着していたようです。

数々の文化人が表現した天橋立を深堀りした記事はこちら▼

いざ、天橋立へ―徒歩で行く京都~宮津のルートとは

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現在では京都~宮津間は、車や電車を使えば約2時間で行き来できますが、移動手段が徒歩しかなかった時代、人々はどんなルートで天橋立に訪れていたのでしょうか。

先述した儒学者の貝原益軒の紀行文『己巳紀行』を見ると、京都⇒南丹⇒福知山⇒宮津のルートで歩いたことが分かります。
ほかにも、
●京都→福知山→由良川・田辺→宮津
●京都→福知山→由良川→大江→内宮→宮津
●京都→福知山→与謝峠→宮津
●京都から若狭を経由する逆回りパターン など
さまざまなルートで天橋立へ訪れていました。というのも、今では車や交通機関を使えば決まったルートでたどり着けますが、徒歩で行く場合は自由にルートを決められるので、道中の観光スポットに立ち寄りながら歩いていたんですね。
今ではなかなかできない贅沢な旅かも知れません。体力・時間に余裕があれば試してみる価値があるかも!?

昔の人の宮津観光について取材した記事はこちら▼

天橋立を120%堪能する5大ビュースポット

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宮津市内には、天橋立を眺めるスポットがたくさんあります。
その中でも、美しく雄大な天橋立を見られるのが、5大ビュースポット「五大観」です。

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天橋立の北側に位置する傘松公園からは、天に龍が昇っていくように見えることから「昇龍観しょうりゅうかん」と呼ばれています。(写真左上)
続いて、南側の天橋立ビューランドからは、龍が降臨するかのように見える「飛龍観」(写真右上)。
雪舟が描いた『天橋立図』と似た構図が見られる東側の景色は「雪舟観」と呼ばれ、近くにはその名にちなんだ天橋立雪舟観展望所もありますよ(写真左下)。また、西側からの景色は、天橋立が一直線に伸びていることから「一字観」と呼ばれています(写真右下)。

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そして、2020年、新たに加わった景観がこちら!
昇龍観と一字観の間に位置する丹後国分寺跡から見られる「天平観」は、天橋立を端から端まで見渡せる大パノラマが魅力の展望スポットです。“天平”の名は、国分寺建立の詔が出された天平時代にちなんで名づけられました。

天橋立の全絶景を網羅した記事はこちら▼

実は名前があるんです!「命名松」を探してみよう

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天橋立の名物「白砂青松」。6,700本の松と白い砂が織りなす景色は圧巻です。この景色に欠かせない松は、ただ生えているだけではないのです。松は昔から防風林、防砂林、防潮林としての役割ももっていて、人との生活に密接に関係しているのです。

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そんな松に名前が付いているものがあるのをご存じですか?
変わった形をしたものや、いわれのある松などに名前を付けて「命名松」と呼ばれています。1本の松が三又に分かれていることから、ことわざ「三人寄れば文殊の智恵」にちなみ「智恵の松」と命名されたものや、500年以上の歴史をもつ「千貫松」など、名前の由来もさまざま。松の近くには名前とその由来が記されているので、ぜひ、命名松を探しながら歩いてみてください。

君の名は……?命名松を探し歩いた記事はこちら▼

天橋立を彩る四季折々の植物

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ハマヒルガオ

天橋立といえば「松」、はもう定番ですね。実は松だけではないのです。天橋立には季節ごとにたくさんの花や植物が顔を出しています。天橋立の南側にある「小天橋」エリアには、海辺ならではの“ハマ”がつくハマナスやハマヒルガオ、ハマボウフウなどの花がたくさん!

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左)ヤマモモの実、右)トベラ

さらにそこから北へ進むと「大天橋」エリアがあり、ここには松はもちろん、ヤマモモやトベラなど花や実をつける植物も。
天橋立を歩いて散策する際には、足元の花や頭上に咲く植物などにも目を向けてみてくださいね。

シーズンごとの天橋立の植物を紹介した記事はこちら▼

天橋立を120%楽しむアクティビティ

雄大な海や白砂青松、色とりどりの植物たちを堪能したら、旅の思い出の醍醐味“体験”も楽しんでください。海辺の町ならではのアクティビティがそろっていますよ。

大人も子どもも夢中になれる貝殻拾い

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文殊エリアから廻旋橋と大天橋を渡るとこんな景色が!一片の曇りもない青空と海、きれいな白砂のコントラストについ見惚れてしまいます。ここで楽しめるのが「貝殻拾い」。

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1時間ほど探してみるとこんなにもたくさんの貝殻を発見しました(写真奥)!拾った中には、ムール貝や牡蠣などのほか、正体不明の貝殻もたくさん。おうちにもって帰ってから図鑑で調べてみるのも面白いかもしれません。また、波に揺られて丸くなったガラス「シーグラス」もたくさん見つけましたよ(写真手前)。
大人も子どもも楽しめる貝殻拾い。思わぬ掘り出し物に出合えるかもしれません。ぜひ海辺の思い出を持って帰ってください。

意外にハマるかも!?天橋立の海で貝殻拾いをした記事はこちら▼

海辺の街ならではの体験をしよう!

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天橋立の北端にある「天橋立アクティビティセンター」では、約10種類のアクティビティが体験できます。一番人気は「天橋立シーカヤック体験」。天橋立沿いを約2時間かけて往復し、海からの絶景を楽しめます。途中疲れてしまっても、すぐ砂浜で休憩できるので初心者でも安心です。

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ほかにも、ボードの上に立って漕ぐ「天橋立SUP体験」や、「ウニランプ作り体験」、「天橋立キャンドルづくり体験」など、体を動かすものから、室内でのクラフト体験などさまざまなアクティビティが用意されています。
旅の思い出としてももちろん、地元の方もご家族や友達同士で気軽にチャレンジしてみてください。

室内でも屋外でも!1年中楽しめる天橋立アクティビティセンターの記事はこちら▼

レンタサイクル&船で気軽に天橋立をまわろう!

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全長3.6㎞の松並木が自慢の天橋立。「一度は行ってみたい!」という人も多いことでしょう。しかし、この3.6㎞の道のりは徒歩約50分、往復すると1時間30分以上……。あれ、結構ハードル高いかも?

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そんな方におすすめなのが、レンタサイクルや船を利用してまわるプランです。丹後海陸交通株式会社の「レンタサイクル&観光船」プランでは、行きはレンタサイクル、帰りは観光船またはモーターボートで観光できます。レンタサイクルは文珠側の「天橋立桟橋」と府中側の「一の宮桟橋」にあるので、どちらからでもレンタル・返却ができますよ。

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傘松観光モーターボートでは、片道乗り捨て自転車とモーターボートの片道がセットになった「ちゃりぼー」コースが人気です。自転車は子ども用や子ども乗せ自転車も用意されているので、ファミリーでも楽しめますよ。
天橋立を気軽に散策したい方は、ぜひレンタサイクル&船をご利用ください。

レンタサイクルや船を利用したプランを紹介した記事はこちら▼

暑い日は海で自由に遊ぼう!

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珍しいアクティビティも十分に楽しめますが、シンプルに海で遊ぶのもいいですよね。天橋立には3つの海水浴場があります。1つ目は丹後由良海水浴場。全長約2㎞もあるロングビーチでは、海遊びはもちろん、砂浜でものびのびと遊べますよ。

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2つ目は天橋立の南側にある天橋立海水浴場です。宮津市屈指の観光地である天橋立を海側から見られる景色はここでしか味わえない絶景です。また、夜には砂浜のライトアップが行われ、昼と夜の両方が楽しめますよ。

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最後は天橋立府中海水浴場です。こちらは天橋立の北側にあり、天橋立アクティビティセンターもすぐ近くにありますよ。

広い海では遊び方も無限大!天橋立の海水浴場を紹介した記事はこちら▼

「天橋立三社参り」で運気アップ

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「天橋立神社」「元伊勢籠神社(もといせこのじんじゃ)」「眞名井神社(まないじんじゃ)」の三つの神社を巡る三社参りをご存じですか?実は、近年、恋愛成就ができると人気なんですよ。では早速、三つの神社をお参りしてみましょう。

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まずは「天橋立神社」から。ご祭神は豊受大神、大川大明神、八大龍王です。本殿のそばには「磯清水」(日本名水百選の一つ)がありますが、こちら、周りが海なのに塩分を含まない真水が湧いている不思議な井戸として知られています。

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続いては「元伊勢籠神社」へ。こちらはかつて天照大神と豊受大神が一緒に住まわれたという格式高い神社です。新月と満月の日に授与される「産霊守り」は、2つ合わせると「明」の字になり、新たな明日が切り開かれますように、という願いが込められています。ぜひスケジュールを合わせて参拝してみてください。

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元伊勢籠神社から10分ほど歩くと、「眞名井神社」が見えてきます。こちらは三社の中でも最も古く、豊受大神を祀ったのがはじまりと言われています。もちろん、パワースポットとしても期待大。鳥居のそばにある天の眞名井の水は、縁結びにご利益があるそうですよ。
ちなみに、三社参りはどの順番でお参りしてもOK。伝説・伝承・信仰が深い古社をめぐることで運気そのものが上がりそうですね!ぜひ幸せをゲットしましょう~。

古社をお参りして運気アップ!天橋立三社参りの記事はこちら▼

未来へ向かって、これからの私たちにできること

約2200年前に現れた天橋立は、地元住民をはじめ、著名人や海外からも高い評価を得ています。これは天橋立の自然が織りなす美しさがあってこそ。その自然を維持していくためにも、松の保全や世界遺産への登録に力を注いでいます。“今”の天橋立と、未来に向かってできることを調べてみました。

いざ、天橋立を世界遺産へ

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ここまで天橋立の歴史や自然などをご紹介してきました。美しい海に、白い砂浜、青々とした松林。どこを取っても絵になる天橋立は、宮津市が、そして京都(日本)が誇る景勝地ですが、実は世界遺産には登録されていないのです……!
現在、宮津市では天橋立を世界遺産に登録するべく、さまざまな活動をしています。その中で、登録されるための課題もたくさん。2007年に発足した「天橋立を世界遺産にする会」では、世界遺産登録に向けて様々な活動をしています。そして同時に地域社会や住民の協力も得て、天橋立の奇跡の景観を作り出している松の保全にも力を入れています。

天橋立を世界遺産に登録するための活動についてはこちらの記事をチェック▼

松を未来へ残す保全活動とは

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実は、天橋立の松は海辺の近くということもあり、松が深くまで根を張れないので、台風などの強い風が吹くと倒れやすいのです。写真は2004年の台風で倒れてしまった命名松「双龍の松」。

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さらに、近年では広葉樹の繁殖が、松の日照不足を引き起こして深刻な問題に。
「白砂青松」の景観を世界遺産に登録するために頑張っている中で、この状況はぜひとも避けたいもの。そこで市民ボランティアや、京都府丹後土木事務所では、美しい松林を取り戻すために日々活動しています。

現在進行形!天橋立の松の保全活動を取材した記事はこちら▼

美しい海が世界とつながる

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天橋立の美しさはいわずもがな。この地を形成する宮津湾も負けず劣らず美しいことをご存じですか?宮津湾の美しさは世界的にも認められ、2016年に「世界で最も美しい湾クラブ」に伊根湾とともに加盟しました。このクラブにはフランスのモン・サン=ミシェル湾や、ベトナムのハロン湾など世界遺産に登録されている湾もたくさん!

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そして、2018年にはモン・サン=ミシェル湾と姉妹湾として提携。天橋立とモン・サン=ミシェルといった、信仰の場へ向かうための「海渡る参道」という共通のロケーションを持つことから、モン・サン=ミシェル湾をお姉様と呼ばせてもらえることに!
さらに、モン・サン=ミシェル湾は世界遺産に登録されているので、世界遺産登録を目指す天橋立も、お姉様からアドバイスを受けつつ、活動が進められています。

古来より、多くの人を魅了していきた天橋立。その美しさを未来へ伝えていくためにも、今、私たちでできることを続けていきたいですね。

あの世界遺産「モン・サン=ミシェル湾」はお姉様!?姉妹湾提携についての記事はこちら▼