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京料理には欠かせない! 丹後地域の高級食材「丹後ぐじ」

宮津を含めた丹後地域(宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町の2市2町)と呼ばれるエリアには、ブランド魚があるのをご存知でしょうか? 特に優れた京都の農林水産物から選ばれる「京のブランド産品」全31品目(2021年現在)の1つに選ばれ、京料理に欠かせないとまでいわれる「丹後ぐじ」。10月から12月にかけて、旬を迎える丹後ぐじとはどんな魚なのか注目してみました!

アカ・シロ・キの3種類?「丹後ぐじ」ってどんな魚?

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おでこがチャームポイントのこの魚、丹後地域では「ぐじ」と呼ばれるアマダイです。アマダイは世界中に3属28種ほど存在していますが、日本の市場に出回るのは主に3種類。全体的に赤みを帯びた「アカアマダイ」、白っぽい「シロアマダイ」、顔や尾びれが黄色い「キアマダイ」。なんだか早口言葉みたいですね。このうち宮津の海では、アカアマダイが漁獲されています。

地方によってはオキツダイ(静岡県)、ナベクサラシ(兵庫県)、コビル(島根県)など、様々な名前で呼ばれています。丹後地域で「ぐじ」と呼ばれる由来は諸説ありますが、角ばった頭の形を表す「屈頭魚(くずな)」が訛って「ぐじ」と呼ばれるようになったそうです。

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基準をクリアしたものにはブランドタグが付く

そもそも高級魚として扱われているぐじの中でも、「丹後ぐじ」のタグが付けられたものは別格。
淡泊で甘みのある上品な味わいが特徴の魚ですが、身が繊細なため、鮮度を保つのが難しいとされていました。そんなぐじを高鮮度・高品質に保ち、水揚げから流通まで様々なマニュアルに沿って徹底した品質管理を行ったうえ、さらに厳しい選別基準をクリアしたぐじだけが、ブランド魚「丹後ぐじ」として認められ市場に出されます。

「丹後ぐじ」を満たす基準とは?

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では、実際「丹後ぐじ」はどのように水揚げされているのでしょうか? 養老地区で漁師をされている黒木さんに伺ってみました。

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まず、丹後ぐじの条件として『丹後ぐじ生産マニュアル』に基づいて漁獲された、高鮮度・高品質なアカアマダイであることが挙げられます。現在(2021年11月)、漁が行われているのは江尻・養老・伊根の3箇所。砂泥質の海底に巣穴を堀って生活するぐじが、餌を求めて活動する日の出頃に延縄(はえなわ)漁業による漁獲が行われています。

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延縄漁業とは、幹縄に針のついた枝縄が多数つけられたものを順番に海へ投入し、横に長く設置しながら漁獲する漁法です。針の先には餌になるオキアミやイカの切り身を付け、ぐじが生息している水深50~120メートルの海底(泥場)めがけて投入。しばらく待ったあと引き上げられます。

幹縄は絡まないように、1回の仕掛けごとにガゴで管理されています。1カゴあたりの幹縄の長さは約1キロメートル。100本ほどの針がついており、仕掛けるのに15分、仕掛けを回収するのに30分と、一度の仕掛けでかかる時間は約45分。1日に4~6カゴを使い操業します。

延縄漁業はあまり魚に負担をかけずに漁獲することができるので、魚体の傷みが少ないのが特徴。また、小さなアマダイは生きたまま逃がすことができるので、保護の観点からもぐじに適した釣り方だそうです。

漁獲したぐじは、「高鮮度・高品質」を保つために共通マニュアルで管理され、魚の取り扱いには細心の注意が払われます。

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まず、釣り上げたぐじの魚体は、直接素手で触らずクーラーボックスに入れられます。これは、素手で触ってしまうことにより、人の体温で魚が火傷して魚体を傷つけてしまうのを防ぐためです。クーラーボックスの中の温度は、ぐじの鮮度を保つために海水と氷で常に4℃(±1℃)に維持されています。この時、海水ではなく真水を入れてしまうと、浸透圧の関係でグジの身が水っぽくなってしまうそうです。

冷水に入れられることで、ぐじはすぐに締められ大人しくなります。その際、締められたぐじの魚体を、氷や他の魚が暴れて傷つけないように、仕切りを設けて管理されます。管理方法はクーラーボックス内にぐじと氷を仕切りで分ける方法や、ぐじと他の魚を仕切りで分け、ぐじ以外の魚に氷を入れて管理するなど、生産マニュアルに定められた方法で管理されています。

このようにして、マニュアルに沿って管理しながら最高の状態で港に運ばれたぐじは、素早く丁寧に荷受場に水揚げされます。

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漁協にて選別・軽量されたぐじの内、500グラム以上のサイズが「丹後ぐじ」の候補となります。それに加え、鮮度・色・形・鱗の状態などを基準に沿って厳しく選別。全ての管理項目を満たしたぐじだけが、ブランド魚として認定されます。その証として「丹後ぐじ」のタグが付けられ出荷されていきます。
出荷作業中も風や日光を遮り、気温の高くならない場所で素早く作業が行われるなど、細心の注意が払われています。

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一度の漁で「丹後ぐじ」の条件を満たせるのはどれくらいの割合か伺ったところ、約1割ほどだそうです。これは、ぐじが深場に生息しているため、釣り上げの際に水圧の変化で肛門から内臓が飛び出したり、目玉が出てしまうことがあるからだそうです。市場に出回るまでの過程を知ると、高級魚として扱われる理由にも納得できますね。

ちなみに、「漁師さんたちはどのようにしてぐじを食べるのか?」
黒木さんに伺ってみたところ「普通です」とのお答えが……。塩焼きや、松笠あげ(鱗をつけたままあげる)、味噌汁にするのが美味しく、黒木さんのお好みは昆布締め(水分を抜いて食べる)だそうです。

実は、漁師ならではの食べ方があるのでは? と期待していた分、聞いた瞬間はちょっと気持ちがしょんぼりしましたが、なるほど、旨いものはシンプルな料理の方が、素材の味を一番美味しく食べられるものだなと、腑に落ちました。
それによく考えると、味噌汁に使うなんて贅沢使いではないですか!!

美味しい魚介が豊富な丹後地域。注目したい食材はまだまだありますが、厳しい基準を満たして市場に出る「丹後ぐじ」は、宮津でも自慢のブランド魚として、たくさんの人に知っていただきたい一品です!

〜おまけ〜

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こちらは早朝、漁師さんが見る日の出の海。一帯がオレンジに染まり、吸い込まれそうな美しさに感動を覚えます。こんなに素敵な景色と、この海で育まれる豊かな海の幸に、思わず感謝したくなりました。

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