宮津市民に愛され続けるソウルフード〜カレー焼き・うえだコロッケ・黒岡アイス〜
黒ちくわやカレー焼きそば、徳利いかなど、宮津のご当地グルメは数知れず。中でも今回は、地元の人たちに“いつもの味”として愛されてきた、知る人ぞ知るソウルフードを3つご紹介します。これを知っていれば、あなたも宮津ツウ!
思い出の味を復活!大人気の粉もん「カレー焼き」
ふかふかとした生地の中に、刻んだキャベツやニンジン、豚バラ肉などにカレールーを絡めた餡が入っているカレー焼き。片手でパクパク食べられる細長い形で、おやつにも軽食にもぴったりな粉もんです。ちょっぴりスパイシーな風味が食欲をそそり、カレー餡とほんのり甘い生地が絶妙にマッチ。つい「もう1本……」と手が伸びてしまいます。
定番の味は「カレー」「クリーム」「あん」の3種類。カレー以外の味も全部まとめてカレー焼きと呼んでいる、おおらかなネーミングがなんともおもしろいですよね。
カレー焼きを販売していたのは、かつてJR宮津駅前にあった「カレー焼きの店 あかふく」です。“カレー焼きのおばちゃん”の愛称で親しまれた店主の松田一枝さんの元気な人柄も相まって、子どもから大人まで通う人気のお店でした。「学生の頃、通学途中のおやつの定番だった」「親戚や同僚への差し入れによく買った」など、様々な声が聞こえて来ます。
2018年に閉店したカレー焼の店「あかふく」
およそ半世紀にわたってカレー焼きを焼き続けた松田さんでしたが、残念ながら2018年にお亡くなりに。多くのファンが、その明るい笑顔と馴染みの味を惜しみました。
しかし2021年3月、「宮津天橋立 漁師町 ととまーと」にてカレー焼きが復活を遂げます! 手掛けたのは、ホテルや飲食事業を展開する地元企業「丹友商事グループ」。きっかけは、ひょんなことから、あかふくで使われていた焼き型を譲り受けたことでした。あかふくのカレー焼きのレシピは一切記録されていなかったため、味を再現するため、松田さんの義理の娘さんにレシピを思い出してもらったり、当時の常連さんに話を聞いたり、社内の料理人が集って意見交換したりと皆の記憶を繋ぎ合わせながら試行錯誤。キャベツの刻み方やスパイスの調合を微調整しながら、試作を重ねました。
「行き着いた現在のカレー焼きは、懐かしい味だ!と褒めていただくこともあれば、当時と違うという意見もいただきます。しかし、賛否両論が驚くほどたくさん飛び交うのは、それだけ『あかふく』のカレー焼きが愛されていたという証拠。これからもソウルフードとして親しまれるよう、美味しさを追求していきます」と丹友商事グループの高岡さん。
さらに、浜町にある「農産物等直売所 宮津まごころ市」で、こんなものを見つけました。あかふくの包装紙を復刻した手ぬぐいです。作ったのは、宮津市内でゲストハウスを営む寺尾さん。松田さんとお話ししながらカレー焼きを食べるのが楽しみだったという、カレー焼きファンの女性です。「宮津にこんな素敵なお店があったということを伝えられればと300枚ほど作ったところ、約1年で完売。現在追加で製作中です。売り上げの一部は、これから宮津で新しく事業を始めようとしている人へのサポートに使う予定です」。
記憶に残り続ける味と、それを引き継ぐ新しい味。カレー焼きは、まさに宮津の人たちの“魂”に刻まれた、アツいソウルフードです。
〈データ〉
宮津天橋立 漁師町 ととまーと
京都府宮津市漁師1775-25
交通アクセス:京都縦貫自動車道「宮津天橋立IC」から車で約5分
TEL:0772-25-9006
営業時間:10:00〜18:00(L.O.17:00)
定休日:火曜日
ホームページ https://totomart-miyazu.com
アツアツ揚げたてが青春の味!宮津高校前で買える「コロッケ」
宮津高校のそばにある、丹後海陸交通バスの停留所。その向かいに小さなお店「うえだコロッケ」があります。常時10種類ほどの揚げ物を販売しており、名物は主に淡路島産のタマネギと北海道産のジャガイモを使ったホクホクの「自家製コロッケ」。ひと口かじれば立体的な衣がサクッといい音を立て、野菜の優しい甘みが広がります。
メニューはほかに、黒毛和牛の切り落としをたっぷり入れた「牛肉コロッケ」、チェダーチーズがとろ〜っととろける「ハムチーズカツ」、ビッグサイズなのにペロリと食べられてしまう、ジューシーかつ意外にあっさりとした「フライドチキン」など。どれも高温の油で揚げられていて、脂っこくないのがリピートしたくなる理由の一つ。
常連さんは、下校途中やバス待ちの高校生たち。部活終わりで腹ペコの学生たちにとって、熱々の揚げ物は最高のおやつ!と大人気です。「うえだコロッケのコロッケやササミカツ、フライドチキンが青春の味だったなぁ」と懐かしむ宮津高校の卒業生も多いよう。
また、近所に住む人たちが“今晩のおかずに”とまとめ買いすることも多く、取材中にもお客さんがひっきりなしに訪れていました。
店主の上田さんは、揚げ物製造卸店の2代目。以前は卸し専門でしたが、自慢の揚げ物を1個から気軽に食べてもらえる場を作りたいと、平成16年(2004)に、うえだコロッケをオープンしました。それからは、朝から昼にかけては市場などに商品を卸し、夕方からこのお店を開けて、個人のお客さんにも揚げ物を提供するというスタイルに。
夕方になると小さなお店のライトに明かりが灯り、コロッケを揚げる良い匂いが漂ってくるのが、宮津市民にとっての“いつもの風景”です。
〈データ〉
うえだコロッケ
京都府宮津市滝馬13-7
交通アクセス:京都縦貫自動車道「宮津天橋立IC」から車で約3分
TEL:なし
営業時間:16:30頃〜19:00頃
定休日:土日祝
店主の“好き”を詰め込んだ店に並ぶ昔ながらの「アイスクリーム」
宮津の人たちが「暑い季節でも涼しい季節でも、年中ここのアイスを食べる」と話すお店が、京丹後鉄道岩滝口駅のそばに佇む「黒岡冷菓」です。
店内に入るとまず驚かされるのが、両側の壁にずらりと並んだレトロなおもちゃとレコードの数々! その数はもはや、ご店主でも把握できていないほどだとか……。
「『ここ何屋さん?』って言われることもあるんやけど、それくらいが心地いいねん」と気さくに話してくれたのは、店主の黒岡さん。ロックミュージックや楽器、レトロおもちゃ、バイク、イラスト制作などがお好きな黒岡さんの“ワクワクするもの”を詰め込んだ空間が、このお店なのです。おかげで音楽好き、バイク好きな人などがお店を訪れ、黒岡さんと趣味話に花を咲かせたあと、アイスを買って帰るなんてこともしょっちゅう。
コレクションに目を奪われているとすぐには気が付きませんが、店の奥には昔ながらの冷凍ショーケースが。そこにはモナカアイスやカップアイスなどがぎっしり入っています。
カップアイスはミルクや抹茶、ほうじ茶などおよそ10種類ほどがラインナップ。由良みかんや「ハクレイ酒造」の酒粕など地元の食材を使ったカップアイスもあり、素材の味をガツンと感じることができます。ほか、店主自らデザインした袋に入った「小倉もなかアイス」や、ソフトクリーム型をしたチョコ&バニラ味の「100円アイス」など、素朴でどこか懐かしい冷菓がそろいます。
「ちょっと食べ歩きに♪」とお気に入りを買っていく人もいれば、「暑い日の差し入れに」といくつも注文する人も。宮津に住む人なら一度は食べたことがある“ソウルスイーツ”として愛されています。
実はこちらのお店、元々は黒岡さんのお婆さんが営んでいた昭和30年(1955)創業のこんにゃく屋さんなんです。今でも店の隅で、手作りこんにゃくが販売されていますよ。こんにゃく作りの傍ら、夏の間だけの限定商品として作っていたアイス菓子がだんだんと人気を博し、黒岡さんが店を継いだ今ではメイン商品となっています。
「リッチな素材を使った濃厚でプレミアムな味わいが今のアイス業界のトレンドです。だけどこの店では、おばあちゃんの頃から変わらない素朴な製法を守り続けています。モットーにしているのは、食べ終わった後なんとなく喉が乾いて水を飲みたくなってしまうことがない、すっきりとした後味です」と黒岡さん。
ロックな雰囲気漂うお店で黒岡さんの楽しい人柄に触れ、昔懐かしいアイスを買えば、気分が明るくなるというリピーターがたくさん。“ただのアイス屋さん”に留まらないワクワクする空間が、地元で愛される秘密なのですね。
〈データ〉
黒岡冷菓
京都府宮津市字須津733-10
交通アクセス:京都縦貫自動車道「与謝天橋立IC」から車で約20分、京都丹後鉄道「岩滝口」駅から徒歩約10分
TEL:0772-46-2066
営業時間:11:00〜19:00
定休日:木曜日