美味しい魚をもっと美味しくする魔法 〜宮津の干物〜
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美味しい魚をもっと美味しくする魔法 〜宮津の干物〜

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干物というと、カサカサとして固い魚の開きを想像する人は少なくないでしょう。しかし、宮津の干物はしっとりと柔らか。その秘密は、新鮮な魚をより美味しく食べたいという宮津の人々のグルメ心にありました。

追求するのは保存性ではなく美味しさ

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数十年前の宮津には、店先や家屋の軒に様々な魚や竹ひごで広げられたイカなどが干されている光景がそこかしこにありました。海辺の街・宮津では、アオリイカやイワシ、アジ、カマスやアマダイなど多彩な魚介類が獲れたことから、昔から干物作りが盛んでした。数は減りつつあるものの、今でも干物の製造販売店が点在しています。
干物というと、足が早い魚介類を長期保存するための食べ物といったイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。しかし、ここで作られているのは魚の美味しさを増すための干物。宮津の干物を食べれば、これがただの保存食ではなく、美味しい魚をより美味しく食べるための人々の智恵の賜物であると気がつくことでしょう。

きちんと手をかけて、旬の味わいを一層美味しく

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「魚介類の鮮度が落ちてしまったから干物にしようと考える人もいます。しかし私が大切にしているのは、生食でも美味しいものからまた違った美味しさを引き出すために、あえて干物にするという考え方です」。そう話してくれたのは、宮津で30年以上干物や惣菜の行商を続ける「きざき」の木崎靖之さんです。
「だから、干物も他の料理と同じく、魚の旬と鮮度の見極め、そして心を込めて手をかけることが大切」と話す木崎さんの干物づくりは、細やかで丁寧な手作業。得意とするのは桜干し(みりん干し)や一夜干しです。

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例えば、「最高に美味しいですよ」と太鼓判を押すアオリイカの一夜干しなら、新鮮なイカの皮を丁寧に剥き、真っ白な身に塩を振って乾燥機へ。23度くらいを保ち6〜7時間干します。また、アジやカマス、アマダイなどの桜干しなら、鱗や内臓を丁寧に丁寧に取り除き洗ったら、砂糖と醤油、水を使った甘辛いタレにつけ、軽く重石をして一晩置き、乾燥機で数時間干して完成。魚そのものの美味しさをタレの風味が引き立てます。
木崎さんは、塩が効きにくい魚なら振り塩に、そのほかなら塩水浸けにするなど食材ごとに下処理の方法を変え、さらにその日の気温や湿度、魚の脂の乗り具合などにあわせて干す時間や温度も変化させるそう。長年の経験で培われた絶妙な塩梅が、美味しい干物を作り上げています。こうして丁寧に干すことで素材の持つうま味がギュッと凝縮され、噛めば噛むほど甘みを感じられるようになるのだそうです。「干す時間が比較的短めで、しっとりしているのが宮津の干物の特徴。水分は残りつつも噛みごたえは出るので、よく噛んで素材の味が染み出してくるのを楽しんでみてください」と木崎さん。

これも干物?海辺の街ならではの贅沢な味わい

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実は宮津には、さらに潤いを残した“限りなく生に近い干物”があるんです。それは、ほんの2〜3時間だけ干して作る「一刻干し」。柔らかさやしっとり感はたっぷり残しつつ、魚のうま味が凝縮された一刻干しは、一般的な干物のイメージを覆す唯一無二の味わいです。
この一刻干しを提供しているのが、地元の魚や特産品を七輪焼きで味わえるお店「カネマスの七輪焼き」です。

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宮津で生まれ育った店主の谷口さんは、一度故郷を出たあとUターンしたことをきっかけに地元の魅力を再確認。故郷のために何かしたいと考えていた時、思い出したのが幼い頃から親しんできた一刻干しでした。その日の朝に獲れた魚を干して昼には美味しく食べられる。自分にとって当たり前の日常だった一刻干しですが、刺身で食べても美味しいほどの鮮度の良いものをあえて干物にするこの食べ方は、実は海辺の街ならではの贅沢だったのだと気がつき、看板メニューにしようと決めます。

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一刻干しを作っているのは、店のそばにある工場。朝仕入れた魚介類を手早く捌き昆布や煮干しで出汁を取り、酢や酒などを配合した自家製の調味料液に漬け込んで建物の2階にある部屋で干したら、昼頃には一刻干しの出来上がりです。「カネマスの七輪焼き」には一刻干しのほか、地元の野菜や練り物、オイルサーディンなどがずらり。好きなものを選んだら、谷口さんが手際良く客の目の前で焼いてくれます。炭が燃えるパチパチという音と共にいただく七輪焼きの一刻干しは格別な美味しさです。

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「私の実家は明治2年(1869)創業の、北前船で運ばれてきた昆布や煮干しなどを卸す業者でした」と谷口さん。「カネマスの七輪焼き」や「カネマス」があるのは旧市街地と呼ばれるエリア。江戸時代から明治時代にかけて、北海道から九州までありとあらゆるものを運んだ北前船が停泊する港からすぐそばの問屋街にあたる場所でした。「カネマスの七輪焼き」には今も、北前船に乗ってやってきた明治時代の焼き物が。その食器で食事することもでき、これもまた贅沢です。

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「北前船で様々な地域の食材が集まる場所であったこと。そしてもっと昔に目を向けると、この辺りは細川家が治めた宮津城の城下町として栄えたこと。こういった背景が、宮津の食文化に反映されているのではないかと思います」と谷口さん。保存性ではなく美味しさを追求する干物が宮津で盛んに作られるのは、そんな歴史が人々の“美味しさへの探究心”を育んできたからなのかもしれません。

<データ>
きざき
京都府宮津市字漁師1726
TEL:080-3862-6498
定休日・営業時間:不定
交通アクセス:京都縦貫自動車道「宮津天橋立IC」から車で約5分
ホームページ http://shop-miyazu.com

カネマスの七輪焼き
京都府宮津市漁師1714
TEL:0772-25-0058
定休日:水曜日・ほか不定休
営業時間:12:00〜21:00 ※土・日・祝日は11:30〜
※当面の間、平日11:00〜14:00は「宮津天橋立ととまーと」にて営業
交通アクセス:京都縦貫自動車道「宮津天橋立IC」から車で約5分
ホームページ http://kanemasu-taniguchi.com/


京都府の海沿いにある宮津市の公式アカウントです!日本三景の一つ天橋立があり、綺麗な海と山が自慢です。