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宮津レトロ建築めぐり〜和洋折衷な洋館を訪ねて〜
宮津のまちを歩いていると、レトロでモダンな建物に出合うことがあります。今回は、明治・大正・昭和とそれぞれの時代から時間が止まっているかのような、ちょっと懐かしくも素敵なレトロ建築に注目してみました。
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まち中に点在するこれらの古い洋風建築は、明治時代に行われた日本の近代化政策の影響によるものだそうです。
当時の日本では外国から招いた建築家によって西洋館が建てられていました。その一方で、日本の建築家たちは彼らから近代建築学を学び、そんな日本の建築家たちに触発された各地の大工の棟梁なども、設計・建築を手掛けるようになっていったといいます。今も宮津のまちに残るレトロな建築は、そういった近代化政策の余韻なのですね。
明治時代に建てられた美しき教会「カトリック宮津教会 聖ヨハネ天主堂」
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東堀川通り沿いの「カトリック宮津教会 聖ヨハネ天主堂」はフランス人の神父・ルイ・ルラーブ氏の設計の元、地元宮津の大工の手により、丹後のケヤキを使用して明治29年(1896)に建てられました。
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教会で使われているステンドグラスは全てパリ製。建築当時、ルイ・ルラーブ神父によってフランスから取り寄せられたものですが、現在同じ技法で作られるステンドグラスはフランスにも無いそうです。
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建物の背面に回ってみると、外壁は上下の木が少しずつ重なるように張り合わせた下見板張り。和洋が組み合ったロマネスク様式の、美しさと可愛さを兼ね備えた教会となっています。こちらの教会は文化財としての価値も高く、教会内部も美しく魅力的。現在は修繕工事のため、自由に見学できるのは外観のみですが、教会内部については過去に記事で取り上げていますので、興味が湧いた方はぜひこちらの記事も読んでみてくださいね。
カトリック宮津教会 聖ヨハネ天主堂について詳しくはこちらの記事をチェック▼
見る角度で表情が変わる「宮津市庁舎」
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本町通りにある打放しの鉄筋コンクリートが印象的な宮津市庁舎。昭和37年(1962)6月完成のこの建物は、世界的な建築家・丹下健三氏の門下生であった沖種郎氏による設計によるもの。戦後のモダニズム建築を現代に色濃く残す貴重な建物のひとつです。構造としては3つのブロックをコの字型に組んで構成されています。コンクリートのゴツっとした重量感ある見た目と、正面に設置されたピロティ(柱だけで構成された吹き抜け空間)の抜け感は絶妙なバランスです!
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宮津市庁舎の面白いところは、見る角度によって表情が変わるところ。ぐるりと庁舎を眺めたら、おすすめの隠れスポットにも立ち寄ってみませんか? 本館東側の外階段を上がった2階のバルコニー。ここからみるピロティの天井部分は、天井と建物の立体交差部分に迫力があり、普段みている宮津市庁舎とはガラリと違う視点で楽しめます。
宮津市庁舎について詳しくはこちらの記事をチェック▼
宮津随一の洋風建築「佐藤医院」
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京街道沿にあるアーチ型の窓が印象的な佐藤医院。こちらの医院は大正15年(1926)に病院設立者の佐藤理兵衛氏によって、それまで勤めていた東京の順天堂病院をイメージして建築したと伝えられています。
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街道沿いに面した主屋は中央ポーチが備えられ、トスカナ式オーダーの柱上部はバルコニーになっています。ポーチやアーチ型窓の多彩な装飾は、宮津の洋風建築の中でも随一の美しさ! 主屋の右裏奥に長い病室棟があり、こちらの棟は宮津中学校寄宿舎の古材を利用して建てられたそうです。敷地内には小さな祠が建てられていますが、洋風建築と日本の祠の組み合わせが絶妙にマッチしています。
爽やかな色合いが素敵な洋館風建物「キセンバ港館」
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宮津市新浜にある木造2階建の洋館風建築は、丹海バス宮津案内所(旧橋北汽船)の建物。大正時代に建設されたもので、昭和61年までは丹後海陸交通の本社として使われていました。
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現在は改装され、お団子屋さんやフォトスタジオなどが入居されており、訪れた人を楽しませています。白く塗られた下見板張りの外壁に、等間隔に並ぶ窓枠の緑色の組み合わせが爽やかでモダンな印象。正面から見た建物の形は台形で、入り口のある面が、まるで建物の角をスパンと切り落としたような特徴的な形をしています。
どっしりとした建物に水色の扉がノスタルジック「中村眼科医院」
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魚屋地区の路地を歩いていると出現するレトロ建築は「中村眼科医院」。建物はかなり大型の2階建てであり、モルタル塗りのどっしりとした外観は見応えがあります。
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門から中を覗くと、看板はなんと右読み!玄関周りのドアや庇の色が水色で、ハイカラな佇まいと昭和を感じる看板の組み合わせが何ともノスタルジックな建物です。
切妻庇に特徴あり! 「浜野路公民館」
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昭和2年(1927)3月頃に完成したと考えられている浜野路公民館。設計・施工は中西熊太郎氏によるもので、下見板張りのレトロな公民館。建物の手前にある掲示板の経年劣化具合が、より一層レトロ感を醸し出しています。
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近づいて見てみると、玄関の切妻庇には時計と、それを囲むように繊細な装飾が施されています。木造の和の雰囲気と洋風モチーフの組み合わせは、あまり見かけたことがない珍しい意匠ですね。斬新な木造装飾と、時計とが寄り添うようなデザインが素敵です。
昭和レトロがたまらない♪ 「由良脇公民館」
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昭和3年(1928)に竣工されたと記録が残る由良脇公民館。設計・施工は浜野路公民館と同じく中西熊太郎氏と推定されおり、凹凸のない箱型に下見張りの外観です。窓周りの額縁の雰囲気なども浜野路公民館とよく似ています。
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建物の上部を見上げると、軒天井に使われている板同士の隙間にも見え方への工夫が施されています。このような細部に洒落た部分を見つけるとちょっと嬉しくなりますね。
宮津のレトロ建築、いかがでしたか? 今回取り上げた建物を思い返してみると、建築当時の流行が取り入れられているのか、窓の形や窓枠に個性が出ているものが多く感じました。
それに気付くと、今度は視界に入る建物の窓が気になりだして、あちこちでキョロキョロとしてしまいました。住みなれたまちでも視点を変えると新たな発見が潜んでいて面白いものですね。
たまには気分転換にゆっくりと、レトロ建築をめぐりながら宮津のまちを散策してみませんか?