魅惑のローカル水族館「丹後魚っ知館」を何度も訪れたくなる理由
天橋立の絶景を見て、おいしい海鮮を食べて、海辺の街・宮津を満喫し尽くした気分になっていませんか? 満足するのはまだ早い! 実は宮津には、海辺に佇むローカル水族館があるんです。今回は京都府北部で唯一の水族館・丹後魚っ知館を訪れ、その魅力をたっぷり堪能してきました。ワクワクしっぱなしだった潜入の様子をレポートします!
おもしろ生き物の宝庫!水族館へ突入
丹後魚っ知館は、栗田半島東部にある関西電力宮津エネルギー研究所に併設されている水族館。多種多様な魚、アザラシやペンギンなど水辺の生物およそ150種類が飼育されており、その姿を間近に見ることができます。さっそく中に入ってみましょう。
エリアは大きく3つに分かれます。水族館エリア、エネルギー展示など学びのコーナー、そしてアザラシ・ペンギンプールなどがある屋外エリアです。まずは、水族館エリアへ。
このエリア一番の目玉が、総水量300トンという大水槽! 宮津近海から遠方の海まで、様々なところからやってきた生き物たちが大集合しています。大きなエイやサメが近づいてくる姿は迫力満点。
穏やかな青い世界を見ていると、海底散歩をしている気分に……。しかし平和な大水槽が一変、火花散るバトルが始まるのが、13時15分頃からのお食事タイムです。
見てください、この激しい餌の奪い合い! 生き物たちのエネルギーを間近で感じられる瞬間、必見です。
館内には大水槽のほか、大きさも形も様々な水槽が全部で30以上あり、見飽きることがありません。
サケがグルグルと泳ぐ円柱型水槽や、
コワモテなウツボたちが暮らす水槽、
マニアにはたまらないサメの骨格標本などがあったり、
館のイメージキャラクター「ウォッチくん」のモデルであるミノカサゴや、
こんなファニーフェイスな生き物たちと出会えたりと、見どころがいっぱいで目移りしてしまいます。
そこで飼育員さんに、特に注目すべきポイントを伺ってみました。
オススメその1は、脱皮を繰り返してどんどん大きくなるタカアシガニ。思わず泣き出してしまうお子さんもいるというほどのインパクト。ちょっとしゃがんで、下から水槽を眺めてみてください。その迫力をより感じることができますよ。
オススメその2は、水槽に1匹だけで泳ぐこの体長40cmほどの魚。大きくなると体長80cmくらいにまでなります。何だかわかりますか? 正体はソトイワシ。地元の定置網で捕獲され、館のおよそ30年の歴史の中でも初めて展示された激レア魚なんです。一度は大水槽デビューをするも、途端に他の魚たちから総攻撃に遭い慌てて救出されたという、ちょっと切ない過去の持ち主です。そのエピソードを聞いてから見ると、なんだか哀愁を感じますね……。
この水槽のテーマは「ご近所さん」。丹後の海に棲む生き物が展示されるので、「宮津にこんな魚がいたの!?」なんて発見があるかもしれない、注目すべき水槽の一つです。中には飼育員さんが早朝から漁船に乗せてもらい、船酔いと戦いながら生き物をゲットしてくることもあるのだとか。
オススメその3は、不思議すぎるビジュアルのこちら。実はこれ、トラザメの卵。紐のような部分を絡めて海藻などに固定された卵の中で胎児は10か月ほどもかけて成長し、親と同じ姿になってから出てくるそう! よく見ると卵の中に、すでにサメの形をした赤ちゃんを発見することができますよ。
生き物の状態はその時々で変化するため、いつも同じ姿が見られるとは限りません。飼育員さんに出会ったら、ぜひその時の見どころを尋ねてみてくださいね。
愛を感じる展示スタイルに注目
館内を見て回っていると、「ぶさかわ!」「私、たまに輝きます。」「一匹オオカミ」といったプレートが。展示されている生き物の特徴が一言でわかって、ちょっとクスッとしてしまいます。
展示の工夫は他にも。「飼育員の絵日記」コーナーでは、飼育員さんならではの目線で描かれた生き物のエピソードが味のあるイラストとともに紹介されていたり……
さらにはなぜか、飼育員さんご自身のトリセツまでありました! ついつい足を止めてしまうこのコーナー。読んでいるうちに、飼育員さんたちのファンにまでなってしまいそうです。
手書きの解説ボードもあちこちに。手作り感のある展示から、丹後魚っ知館のアットホームな雰囲気と、飼育員さんたちの生き物への愛情を感じることができますよ。こんな工夫が、思わず何度も訪れたくなる理由の一つなのかもしれません。
貴重!水族館の裏側を覗き見
さて、今回は特別に、水族館のバックヤードを見学させていただくことができました。こちらは大水槽の上。水槽の中央にある大きな岩(に見える強化プラスチック)の上は、餌やりなどで使う足場になっていたんですね!
この黄緑色の液体が入った水槽は、言わば魚たちの保健室。調子の悪い魚を、薬を入れた水の中で療養させています。
飼育員さんたちが生き物の餌の準備をしている様子も見せていただきました。餌である魚の口の中にサプリメントや薬を入れて、生き物の種類や個体の体調に応じたものを準備。細やかなケアが行われていて感動です。
可愛すぎるアザラシ&ペンギンに会える屋外エリア
餌の準備ができたら、アザラシ&ペンギンの餌やりタイムが始まるということで建物の外へ。なんとこの屋外のエリア、入場料はかからないというから驚きです。餌やりタイムは、コロナ対策期間中は11時頃・15時15分頃の1日2回見ることができます。
まずはマゼランペンギンのララちゃんが餌をパクリ。よちよち歩く姿に癒されます。
そして次は2頭のゴマフアザラシの番。ゴン太くんもひかりくんもとても芸達者。写真はゴン太くんが飼育員さんのほっぺにチュッとするシーンです! 飼育員さんとの掛け合いがおもしろく、動物と人との信頼関係も感じられる、心がほっこりする餌やりタイムですよ。そして、アザラシたちの出番の間もペンギンのララちゃんが我がもの顔でデッキをウロウロ……。お茶目でマイペースな感じがとっても可愛いので、こちらにも注目を。
そしてぜひ餌やりタイムのあと、もう一度見に行ってみてください。お腹いっぱいになったアザラシがうとうとする、可愛いお昼寝シーンに出会えるかも。眼福です。
屋外エリアには、プールに入って直接魚たちと触れ合えるタッチングプール(現在休止中)も。子供たちが大はしゃぎする大人気スポットの一つです。
視線を遠くに移すと、宮津の海が一望できます。これだけでも贅沢な気分。
そして餌やりタイム終了後、さっきの飼育員さんたちと遭遇しました。なんでもお二人、熱帯魚を新しく迎え入れるためこれから奄美大島へと向かうのだとか! フェリーとトラックで魚たちを運ぶ間は、お二人も魚たちの体調管理をしながら一緒に移動。過酷な旅ですね。気をつけていってらっしゃい……!
自然と「また来たいな」と呟いてしまう、そんな水族館
再び館内に戻り、最後はエネルギー展示のエリアへ。エネルギーの歴史や発電の仕組みが学べるパネルや模型が並んでいるほか、魚たちの生態を解説した映像が見られる「魚っ知シアター」(現在休止中)や農水産研究の成果を展示した「魚っ知コーナー」などが。子どもから大人まで好奇心をくすぐられるエリアです。
全てのエリアを見て周り、大満足で丹後魚っ知館を後にしようとしたその時、出入り口付近にある「うおっち館バッジ」なるガチャガチャに目が留まりました。
実は水族館エリア内のあちこちにこんなパネルがあって、気になっていたんです。実際に展示されている生き物たちがデザインされた缶バッジが景品のガチャガチャというわけです。筆者お気に入りのミズダコのバッジもあるということで、「これはやるしかない!」とさっそく回してみると、
おもしろかわいいバッジばかりで、手が止まりません! が、ミズダコが出ません……。
「最後の1回」と回したところ、ついに! 念願のミズダコが出ました。思わずご本人と一緒に記念撮影です。
缶バッジのほか、かわいいタオルなども販売していますよ。どちらも飼育員さんがデザインしたオリジナルグッズです。お土産も買って、大満足の気分で館を後にしたのでした。
決して大規模ではない丹後魚っ知館。しかしここはその名の通り、「生き物たちの尊さと魅力を知ってほしい」という飼育員さんたちの熱い思いに支えられ、訪れる人に様々な発見と学び、そして癒しを提供してくれる、素敵なローカル水族館でした。
<データ>
丹後魚っ知館
京都府宮津市小田宿野1001
交通アクセス:京都縦貫自動車道「宮津天橋立IC」から車で約20分
TEL:0772-25-2026
開館時間:9:00〜17:00 ※当面の間、新型コロナウイルスの影響で16:00までに営業時間を短縮中
入館料:大人300円・小中学生150円
定休日:水・木曜日 ※祝日の場合は翌平日