見出し画像

鬼が残した数多の痕跡!? 須津にひっそりと残る「鬼の岩屋」

画像1

全国各地で語り継がれる、鬼にまつわる昔話や名所。宮津には、鬼が暮らしたと言われる「鬼の岩屋」があるのをご存知でしたか? 奇岩が集まる知られざる名所のミステリアスな魅力をご紹介します。

蘇らせたい、忘れ去られていた名所

画像2

与謝野町との境に程近い須津地区の山の中に、鬼の岩屋と呼ばれる不思議な場所があります。今は訪れる人もほとんどおらず、ひっそりとしているこの場所ですが、大正時代には「鬼の穴」という看板が立ち見物客で賑わい、夜店も出たほどだったといいます。いつの間にか忘れ去れられた鬼の岩屋の存在を村の歴史を綴った『吉津村誌』で偶然知り、ここをもう一度須津の名所にしたいと周辺の整備をしているのが、吉津地区公民館の館長さん。地域の人たちにも協力を仰いで荒れた山道を通れるように整え、今では数年に一度のペースで地元の人たちを鬼の岩屋に案内しているそうです。

鬼が暮らした痕跡がいっぱい!?

画像3

再びその存在が知られるようになった鬼の岩屋とは、どんな場所なのでしょうか。実は鬼の岩屋というのは、鬼が残したと伝わるいくつもの痕跡の総称です。
須津のほぼ中央を流れる宮川沿いに山に入り、静かな山道をさらに奥へと進むと、鬼の岩屋の入り口に到着します。まず目に飛び込んでくるのが「鬼の岩窟」。巨岩が不思議な形に重なりあってできた洞窟です。岩窟の横には畳のような模様のついた高さ10mほどの巨岩「畳石」もそびえ立っています。

鬼見の時

その手前には「鬼見の滝」が。3mほどの小さな滝ですが、清らかな水がしぶきを上げ、静寂に水音が響く様はどこか神秘的です。

画像5

滝の近くには「鬼の飛石」と呼ばれている岩が。言い伝えではこの石を飛び込み台のようにして、鬼が飛び降りたのではないかとされています。その根拠は……

画像6

「鬼の飛石」の斜め下方にあたる位置に、鬼の足跡がついた「鬼の足跡石」があるからです。くっきりと残っているこの足跡はおよそ30cm。巨体がダイナミックにジャンプした姿と着地の衝撃を想像させますね。
『吉津村誌』にはほかに、「鬼のうぶだらい」と呼ばれる、常に雨水をたたえる不思議な岩も付近にあることが記されていましたが、こちらは未だ発見できていないのだそう。

画像7

また、2017年には「畳岩」のそばで、石垣のように積み重なる岩を発見。これも鬼の痕跡かもしれないと「鬼の石垣」と名付けられました。
「鬼の岩屋の魅力は、これらの痕跡全てが極めて狭い範囲に集まっていることです。その真ん中あたりに立ってみると、奇岩に周りを取り囲まれ、押し迫ってくるような迫力を感じます。ここが鬼のすみかだったんじゃないかと思いを馳せると、ワクワクしてきますね」と館長さん。

人々の興味を惹きつけてやまない“鬼”という存在

画像8

鬼の岩屋の存在からは、この場所を発見した当時の人々の好奇心が垣間見えると館長さんは言います。「大正時代以前にこの場所を見つけた当時の人は、見たことのない奇観に驚いたことでしょう。ここに鬼が住んでいたら……。と想像し、恐ろくも好奇心をそそられたのではないでしょうか。鬼の岩屋の近く、宮津市・与謝野町・福知山市にまたがる大江山にも、鬼の伝説が残っています。実は二箇所の鬼は同一で、人には見えない道を通って須津と大江山を行き来していたのではないかという噂まであったよう。あれこれ想像して、楽しんでいたのだと思います」。
人々の怖いもの見たさにも似た好奇心を刺激して、見物客で賑わった鬼の岩屋。この名所で当時と同じようにワクワクする人が増えるよう、館長さんはこれからも案内を続けていきたいと意気込んでいます。

〈データ〉
鬼の岩屋
所在地:京都府宮津市須津
    ※吉津地区公民館(宮津市須津1031)の東を流れる宮川沿いを南へおよそ1.5km進み、東に折れておよそ500m
お問い合わせ:0772-46-2041(吉津地区公民館)

こちらの記事も要チェック!
京都府広報課の地域情報発信WEBサイト・KYOTOSIDE
悪しく美しく愛おしい……京都に伝わる鬼の伝承【福知山市・宮津市・京都市】


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!