見出し画像

宮津で「日本一の酢」を造る〜飯尾醸造〜

日々の料理の中で使う酢の旨味について意識したことはありますか? 丹後魚っ知館の手前、栗田湾に面した海辺の町に明治時代創業のお酢の醸造元、飯尾醸造があります。飯尾醸造の酢は、ほんの少し料理にプラスするだけで驚くほど味が引き締まり旨味が増すのです。それもそのはず、こちらの酢は米作りからスタートし1年半かけて醸造されます。その酢造りの秘密とこだわりに迫ります。

米作りから醪(もろみ)造り、酢造りまで全て自前で

画像2

栗田くんだ湾の漁港町に立つ風格ある建物が明治26年(1893)より酢を造り続けている飯尾醸造です。今も昔ながらの製法で同社の銘柄「純米富士酢」をはじめ様々な酢を大切に醸造しています。

画像3

お酢造りはいたってシンプル。米酢の場合、日本酒に酢酸菌を加え発酵させて造るので、主な材料は「米」と「水」。飯尾醸造では由良ヶ岳の伏流水と丹後で育った無農不使用の米のみを使用して造られます。

画像4

飯尾醸造が無農薬栽培の米を使うようになったのは昭和 39 年(1964)。現在、蔵を守る 5 代目当主・飯尾彰浩さんの祖父、輝之助さんの時からだそうです。当時、日本の農作物は強い農薬を大量に使って作られる時代。農薬を撒いた田んぼには人が近づかないよう立ち入り禁止の赤い旗がたてられ、「こんな田んぼで作った米から酢を造っとったらあかん!」と感じ、時代の流れに逆行しても体に良く、安全な米で酢を造りたい と各農家に無農薬栽培での米作りをお願いして歩き苦労の末、作ってもらえるようになりました。

画像5

その志を継いだ4代目は無農薬栽培による農家の負担を減らそうと様々な農法を研究して取り入れ、さらに日本の農業を守りたいという思いから米を高値で買い取るなど農家との強い信頼関係を結んでいきました。

画像6

現在は契約農家の米に加え、宮津市の棚田を守りたいという思いから風光明媚な里山にある棚田を買い取り自社で米作りもしています。田植えや稲刈りの時には全国からのボランティアも参加。この体験の評判が口コミで広がり、今では1日30人ものボランティアが集まるのだそうです。(美しい棚田の様子や田植えや稲刈りの様子、酢造りの様子は飯尾醸造のYouTubeチャンネルで見ることができます。

米作りに150日、酒造りに50日、酢作りに100日、熟成に300日かけて造られる酢

画像7

こうして出来上がった米でまず麹造りが始まります。飯尾醸造では今も杜氏や蔵人が住み込みで酒造りを行っており麹造りからスタートし約50日かけて日本酒を造ります。

画像8

その酒に水と種酢を合わせ今度は100日かけてゆっくりとアルコール分を酢に変える昔ながらの「静置発酵」を経た後、300日間「長期熟成」させて純米酢が完成します。
日本に数多くある酢のメーカーでも自社で酒造りはもとより、米作りからスタートし約1年半もかけて酢を造るところは、ほぼ皆無なのだとか(大手メーカーだと2週間で酢ができてしまうそうです)。

画像9

ところで米だけで酢を1ℓ造る場合、最低限必要な米の量は120g。ところが飯尾醸造の代表銘柄「純米富士酢」では米を200gも使います。これはJAS規格の5倍の量。ゆえに出来上がった酢はツーンとした酸味がなく、驚くほどまろやか。そして美しい黄金色をしています。しかも、たっぷりの米を使っているため旨味が強く、少し加えるだけで上等の味になるのも魅力です。

宮津市の魅力を世界中に発信する

画像10

長年、宮津市で酢を造り続けてきた飯尾醸造ですが、商品を作って販売し「自分たちが良ければいいのではなく、自分たちの後ろにあるものも大切にしたいです。宮津市の美しい景色を残したり美味しい食材があることを知ってもらうなど宮津や丹後の魅力をもっと発信していきたいです」と飯尾彰浩さん。
その一つとして、かつて花街があった新浜の築120年の商家を買い取り、おしゃれに改装。東京からシェフを招きイタリア料理店「aceto(アチェート/イタリア語で酢の意)」をオープンさせました。

画像11

これをきっかけに周辺にお店が増え、近畿はもとより東京や海外など遠くから泊りがけで料理を食べに来る人が増え、宮津市での滞在時間が増えてくれたらという思いもあるそうです。「こうやって長年、商売をさせてもらっている町に恩返しをしたいと思っています」。

画像12

さらに数年前より「世界シャリサミット」を宮津市で開催。理想の鮨のための“理想のシャリ作り”を学ぶサミットですが、世界中から鮨職人が集まるだけでなく、鮨に関わる業者も参加。「ここで鮨店と海苔店が出会ったり、鮨店同士が仲良くなって情報交換したりとハブ的存在になればいいなと思います」と飯尾さん。

画像13

この他にも飯尾醸造の活動は多岐に渡り、新しい酢も毎年、開発しています。酢造りを通して伝統製法の美しさを伝えると共に、丹後の豊かな自然や魅力を日本、世界に発信する飯尾醸造の今後の展開に目が離せません。

<データ>
飯尾醸造
宮津市小田宿野373
TEL:0772-25-0015
ホームページ

ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!