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【天橋立#11】なぜ、天橋立はまだ世界遺産ではないのか?

日本三景のひとつ「天橋立」の魅力を連載記事で紐解きます。
第11回のテーマは「世界遺産」。日本には現在、25の世界遺産が登録されています。見てみると、富士山、知床、屋久島……いずれも有名なところですよね。我らが天橋立もそこにいるはず……と思いきや、なんと天橋立、まだ世界遺産ではありません!!
現在、この神秘的な自然景観を世界遺産に登録しようとした活動を頑張っている真っ最中なんです。
世界遺産の登録に向けて、私たちにもできることとは一体どんなことなのでしょう?

「世界遺産」に登録されるとどうなるの?

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世界遺産:マルタ共和国首都ヴァレッタ

よく名前だけは聞かれますが、「世界遺産」とは、一体何なのでしょう?
登録されると、どんなメリットがあるのでしょう?
日本ユネスコ協会連盟のホームページよると、世界遺産は「有形の不動産」を対象にしており、①文化遺産(記念物や建物、遺跡など)、②自然遺産(特徴的な地形や風景、生態系など)、③複合遺産(文化遺産+自然遺産)の3種類に分けられています。
世界遺産に登録されることは、「地域の財産を人類共通の財産として次の世代へ引き継ぐ」ことの世界的なアピールとなるのと同時に、国際的な保護・保全の対象となります。周辺の観光産業にも大きな影響が起こることは、近年の世界遺産登録のニュースを見るとよくわかるかと思います。

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世界遺産:岐阜の白川郷

世界遺産として登録されるためには、以下のような条件が必要になります。
①国内の世界遺産候補物件リスト(暫定リスト)の中から、条件が整ったものが世界遺産委員会に推薦されます。

②専門機関による調査が行われます。文化遺産は国際記念物遺跡会議(ICOMOS)、自然遺産は国際自然保護連合(IUCN)が調査します。

③世界遺産委員会(年1回)で、専門機関からの報告書を元に、リストに登録するかどうかを決定します。

天橋立は現状、①の国内の暫定リストに入ることが目下の目標です。

天橋立が世界遺産を目指す理由

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“天橋立を世界遺産に”という動きは、子どもたちが「日本三景」という言葉を知らない状況に危機感を感じたことから始まりました。
未来を担う子どもたちに、祖先から受け継いできた天橋立の魅力や文化を伝えたい、美しいふるさとを残したい……そのような思いから、平成19年(2007)に京都府、宮津市、伊根町、与謝野町が共同で、提案書を文化庁へ提出。世界遺産登録を目指した活動がスタートしました。

提出した提案書ですが、翌年、文化庁からの審査結果は残念ながら、世界遺産候補見送りとなってしまいます。
日本を代表する特徴的な海洋景観であることや、日本のさまざまな芸術作品や庭園に影響を与えてきた「白砂青松」について非常に高い評価を受けましたが、課題も多く指摘されました。今後はその課題を解決するために取り組んでいくことが必要になります。

世界遺産登録に向けて!天橋立の課題とは?

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課題はいくつもありますが、まずは「白砂青松(※)」の景勝地が世界史的に見ても、また国際的な観点からも、“他に比べるものがない普遍的な価値を持つこと”を証明しなくてはなりません。
また、松林のある砂嘴さしを“天につながる橋”と見立てる日本人ならではの伝統や精神性についての十分な説明や、天橋立周辺の構成資産や要素の保護など、国内の暫定リストに載せるというだけでも、とてもハードルが高いことがわかります。
(※)白い砂浜に青々とした松原のこと

ですが、暫定リスト掲載落選時の天橋立への評価は、「提案書の基本的主題をもとに、登録に向けて作業を進めるべきもの」という高いものでした。今、現地で取り組んでいる調査、研究、保護活動を継続しつつ、特に大切なこととして、自治体だけでなく地域住民も一丸となって、この周辺の景観の保全に取り組んでいくことが求められます。

最初に提案書を提出した2007年の12月には、市民団体「天橋立を世界遺産にする会」が発足しました。世界遺産登録に向けてのシンポジウムやイベントを開催して天橋立の価値を伝え、天橋立ファンを着々と増やし続けています。現在、会員数は6,900人、1万人を目指して奮闘中です。
地域社会や住民の協力なしには、この貴重な遺産を維持できません。世界遺産に登録されるためには、該当するエリアがその価値を保護するために管理されていることも必須の項目となるため、ぜひ、地域の保全活動や、市民団体の活動についても知ってくださいね。

次回、天橋立#12では、天橋立の代名詞「白砂青松」を取り上げます。現在、自治体や住民が取り組んでいる「松の保全活動」について、詳しくご紹介します。

<データ>
天橋立を世界遺産にする会
世界遺産を目指し発足した「天橋立を世界遺産にする会」は現在会員数1万人を目指し、保全や魅力発信などさまざまな活動を行っています。

2020年度は京都市内にある京都府立京都学・歴史彩館で専門家による講演会が行われ、動画でも配信中↓


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