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重奏する奉納神事も魅力! 丹後で最も古い籠神社の「葵祭」

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毎年4月24日に行われる籠神社(このじんじゃ)の「葵祭(あおいまつり)」。その歴史は古く、北近畿、丹後地方では最も古い祭礼と言われています。
葵祭の特徴のひとつに神輿渡御と共に大獅子、大神楽、勇壮な太刀振りや笹囃子などの奉納神事を各地区が担当し、それぞれの役割を各所で同時に行う「重奏する祭」というところ。今回は、お祭の謂れから、あちらこちらで重奏する奉納神事の一部をご紹介します。

豊受大神ゆかりの藤の花を冠に挿して行う「葵祭」

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籠神社の「葵祭」の始まりはとても古く、約2500年前といわれています。お祭が行われるのは桜が終わり、新緑がまぶしくなる4月24日。神職さんの冠に藤の花が挿されていることからもわかるように、かつては「藤祭」と呼ばれていましたが、欽明天皇の頃に「葵祭」と称されるようになったと伝えられています。(ちなみに下鴨・上賀茂神社の葵祭では、祭礼の行列に連なる人々は葵の葉を挿すのが決まりなんですよ)。

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藤の花は籠神社ゆかりの豊受大神のお姿を象徴する花です。現在も豊受大神を主神とする奥宮・眞名井神社や籠神社(写真)の境内には藤棚があり旧暦の4月24日頃、ちょうど花が見頃を迎えます。
※籠神社と豊受大神の関係についてはこちら

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祭の要は五穀豊穣や大漁祈願、万物の平和を祈るとともに、祭神の再誕・再生を示す「御生れ神事(みあれしんじ)」。その中で、神霊を神輿にお遷(うつ)し、地域を巡行する神幸祭が行われます。

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その祭事の途中や前後、神幸祭の道中で、地域の人々による平安時代以来の勇壮な太刀振(たちふ)りや神楽などの奉納神事(京都府無形文化財)が行われ、これがとっても賑やか!  
奉納神事は難波野地区から「神楽」、大垣地区が「大神楽」、中野、溝尻地区は「太刀振り」「笹囃子」、江尻地区からは「大獅子」「太刀振り」「笹囃子」(写真)が奉納されます。
どのような神事、奉納神事が行われるのか。祭の流れと共に少しだけご紹介します。

神楽で神輿が通る道を清める

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朝9時頃、境内では神輿が進む道を清めるため、難波野地区による神楽が奉納されます。曲はいくつかあり、中には獅子が天狗の振る扇に戯れたり鞠をくわえて喜ぶ舞というものもあるそうですよ。

鈴の音と共に荒ぶる獅子が神域を清める

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9時40分に本殿で祭の始まりを知らせる一番太鼓が打たれると、神職さんらが本殿へ向かい祭典が始まります。祭典の間、拝殿前では大獅子がトッケツ(棒の先端に大型の鈴をつけたもの)の音に合わせて暴れ舞い、場を清めます。

「繩手振り」で練り混む勇壮な太刀振り

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この頃になると境内には各地区の奉納神事の行列が神社に到着しはじめます。まず先陣を切って溝尻地区の太刀振りが「繩手振り(なわてぶり)」で境内に練り混んできます。一列に並び、同じ所作で太刀を振る姿は勇壮。そして、石段下の盛砂を崩して広げ、その上で次々に奉納神事が行われ、神輿が通る道を清めます。

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奉納神事の中でもやはり目を引くのが太刀振り。京都府北部、丹後地域の祭で太刀振りを行う地域が多くありますが、それらは中野地区をはじめとする府中の太刀振りを習い伝承したといわれています。
この太刀振りに参加するのは子どもから青年まで。地区により異なる色の襦袢(じゅばん)にタッツケ袴、タスキ、白ハチマキ、手甲(てっこう)、白足袋、草履という姿。白紙を細く切った紙垂(しで)で太刀を飾り、太鼓と笛の囃子に合わせて舞う姿は、とてもカッコイイもの。太刀振りは地区ごとに異なったリズムや所作があるので、そこもぜひ注目して観てくださいね。

鎮座1300年を記念して復活した神輿

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10時45分頃、神輿の前で大垣地区の大神楽が奉納され、神輿を清める「輿清(こしきよ)めの儀」が行われます。

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神様が神輿に遷られると国分地区の人々が担ぎ、神幸祭がスタート。この神輿は1892(明治25)年に作られたもので、2019(平成31)年に本宮(籠神社)鎮座1300年を記念し60年ぶりに復活したもの。大きくて立派な神輿ですね。
神輿の渡御に先立ち、太刀振り、大獅子、大神楽が道を清めながら進み、続いて各地区の幟、神輿、神職、鉾などの威儀物が行列していきます。

躍動感あふれる大神楽

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途中、稲荷堂、十王堂、嶋の堂、経堂と呼ばれる地を立ち寄り、それぞれの場所で大神楽が奉納されます。ここには昔のような建物はありませんが、小字や祠としてとしてちゃんと残っています。「今はなくなってしまった土地の形跡や記憶も、神事を通して次の世代に継承しているのですね」と大神楽を奉納する大垣地区の森美忠さん。

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12時50分頃、籠神社の周囲を旅した神輿が神社へ到着。それに合わせて太刀振りや笹囃子が神輿を迎えます。神輿から旅をしてきた神様を本殿へお遷し、還幸祭(写真)の神事が行われます。

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還幸祭が行われている時、本殿前では生まれかわった神様を祝福する大神楽「六遍返し」が奉納されます。大神楽は他に神幸祭などで掛ける(=奉納すること)「剣舞」「門舞」「本舞」がありますが、なんといっても大神楽の一番の見せ場はこの「六遍返し」。通常の「本舞」は8分ほどですが(この舞を8分も行うだけでも素晴らしいですが)、「六遍返し」は12、3分もあり技術的にも体力的に非常に大変なもの。

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大神楽の稽古は例年4月から始まります。前出の森さんにお話を伺うと、稽古では先輩たちから、より動物らしく見えるように頭の角度や振り方などを厳しく指導されるのだとか。そうして稽古の具合をみながら、今年はこの人、と選出されるので、「六遍返し」に選ばれるということは非常に名誉であり、誇りのあることなのだそうです。
「どの場所を誰が担当するかは祭の直前に発表されるのですが、六遍返しに選ばれると、やはり気合が入りますし、当日の朝はご先祖様のお墓にご挨拶して、禊をしてから挑みます」。
同じように各地区の奉納神事にも、そのような選ばれし者のみが行う奉納があり、一番の見せ場になっています。

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その後、「チャーハイ」の掛け声で中野地区の太刀振りや笹囃子が、祭の締めくくりとして江尻地区の太刀振りが行われます。中でも両地区にある、大きくジャンプをして太刀を飛び越える姿は勇壮。これも選ばれた人しかできないのだとか。より高く飛ぶ方が良いそうで、「よう跳ぶもっと跳べ!」と声がかかります。(写真上:中野地区、下:江尻地区)

その後、各地区に帰り、神社やお寺などで奉納し、祭が終了します。葵祭が終わると宮津にも初夏がやってきます。

<データ>
丹後一宮 元伊勢 籠神社
宮津市字大垣430
TEL:0772-27-0006
ホームページ https://www.motoise.jp/

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